レオポルド・ショヴォー(Léopold Chauveau 1870–1940)をご存知でしょうか。日本では『名医ポポタムの話』や『年をとったワニの話』などの児童文学作家として親しまれていますが、本国フランスでは、唯一無二の世界観を持つ彫刻家としても高く評価されています。
医師から芸術家へ
リヨンで生まれたショヴォーは、有名な獣医学者で教授でもあった父・オーギュストの影響を受け、自らも外科医としてキャリアをスタートさせました。
転機が訪れたのは1905年頃のこと。ナビ派の芸術家ジョルジュ・ラコンブと知り合ったことで木彫を始め、1908年からは空想上の「怪物」たちの制作にのめり込んでいきます。1911年には、格式高いサロン・ドートンヌにも出展するなど、早くからその才能を発揮していました。
息子のために描かれた物語
1910年頃、彼は自分の息子のために、自ら墨で挿絵を描いた『怪物の家(La maison des monstres)』という物語を作り始めます。これが、後に続く豊かな児童文学の世界の第一歩となりました。
その後、軍医として第一次世界大戦に従軍し、さらに家族の死が相次ぐという過酷な経験をしますが、戦後は執筆活動に専念。つらい現実から自分や子どもたちを癒やすかのように、あのおどけたモンスターたちが次々と生み出されていきました。
時代を超えて愛されるモンスター
ショヴォーの描くモンスターは、丸みを帯びた愛らしい姿が特徴です。単に「可愛い」だけでなく、どこか人生の不条理を感じさせるような不思議な魅力に満ちています。
『小さな青い星』や『獣たちの話』といった作品も、動物たちの姿を借りて人間社会をチクリと突くような、鋭くも優しい視点に溢れています。子どもがワクワクするのはもちろん、大人が読んでも「人生ってこういうもんだ」と深く頷かされる力があります。
オルセー美術館での再評価
しばらくの間、彼の名は歴史に埋もれていましたが、21世紀に入ってから再評価が一気に進みました。特に2020年、パリのオルセー美術館で開催された「モンスターたちの医者 Au pays des monstres」展は大きな話題を呼び、彼の独創的なアートは世界中の人々を再び虜にしました。
悲劇をユーモアに変え、自由でのびやかな表現を貫いたショヴォー。ジャンルを軽々と飛び越えて、名もなきモンスターたちに命を吹き込んだ彼の生き様は、今を生きる私たちに「想像力の持つ力」を教えてくれている気がします。